My Own Life Is Rubbish

主にライブレビューや音楽のことについてのブログです。

MY ALBUM OF THE YEAR 2016

今年も残すところ1日を切ってしまいました。年々音楽関係にかけるお金が増えていってるなと感じています。今年からLPを買い始めたというのが大きな要因でもあるのかもしれませんが…。

さて今年1番聴いたアルバムといえば、それは間違いなくケンドリック・ラマーの「To Pimp A Butterfly」なのですが、それはもう去年のアルバムということで今年聞いたアルバムについても振り返っていければと思います。今年は本当に豊作ばかりで、脂の乗ったベテランの作品や新進気鋭の若手の作品まで2週に一度は何かしら聴いてみたいアルバムが発売されるという感じでした。楽しかったです。そして自分の好みの変化も結構感じていて今までは聴いて来なかったジャンルなどもすんなりと耳に入ってるくるようにもなりました。今MY ALBUM OF THE YEAR 2015を選んだら、去年のトップ10から半分以上は入れ替えがあるんだろうな。でもそのときの気持ちで選ぶのが重要かなとも思ったり。今から自身の今年のアルバムオブジイヤーを発表しますけど、来年振り返ってみるとまた全然浅いわ!とつっこむ感じになってたら面白いなと思います。それではトップテンの発表スタート!!!!!!!

…の前にトップテンには入らなかったものの個人的に印象深かった作品を超ざっくりと紹介。

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左上から順に、

  •  Anderson .Paak - 「Malibu」

夜のドライブにこのMalibuを流したらめちゃくちゃおしゃれなんじゃないかと空想を膨らませながらよく聴いたアルバム。ヒップホップ、ジャズ、ファンク様々な要素が混在しているが、散漫にならずに、むしろ彼の個性が際立っているのはお見事。僕が大好きクリス・デイヴがドラムを叩いている曲もあります。

  • Jack Garratt - 「Phase」

何が凄いって全部1人でやってしまうこと。全部1人でやるっていうのはライブを観てその本当の意味に気づくはず。エレクトロとR&Bをベースに彼の音楽的素養を全てのせたような、そんなアルバム。

  • Hinds - 「Leave Me Alone」

スペインのマドリッドから元気なローファイ女子達登場!昨年からにわかに話題を集めていたHindsが今年の初めに1stアルバムを発表。もっとガレージサウンドを前面に出したロックな作品になると思いきや、割と脱力感のある、それこそ地中海を思わせるようなゆったりとした曲が多い。これがけっこうクセになる。来日ライブも行きたかったな。

アイドルだからと言って侮ることなかれ。寝てみる夢をテーマに、アルバムを想定して作られていないだろうシングル曲もうまく馴染んでいる印象。全体的に落ち着いたイメージの曲が多い。個人的に桃色空が名曲すぎる。アイドルファンのみならず、音楽ファンにもぜひ聞いて欲しいアルバム。

  • Ra Ra Riot - 「Need Your Light」

ジャケットのイメージ通りにみずみずしく、軽やかで光が透き通ったような素敵なアルバム。元Vampire weekendのロスタムがプロデュース。ベスト10に入れても良かった。来日したら観に行きます。

  • Underworld - 「Barbara Barbara, we face a shining future」

サマソニ2016のヘッドライナーとして予想外?に素晴らしいライブを披露してくれたことでも記憶に新しいアンダーワールドの最新作。何回も聴くと好きになってくるスルメアルバム。

近年は年に数回フェスに出演する程度の活動しかしていなかった彼らがおよそ3年ぶりに新曲を発表。EPのタイトル通りに過去・現在・未来のThe Strokesを客観的に振り返ったような作品になっている。Futureに相当するDrag Queenが次のアルバムのヒントとなるか。

  • Chance The Rapper - 「Coloring Book」

今年はChance The Rapperの年とも言えるほど大活躍し、2016年の音楽を追っていたら必ずこの名を目にしたことと思う。アルバム(ミックステープ)は各雑誌・批評家、一般リスナーから絶賛を浴び、それはグラミー賞のルールを変えるほどだった。ゴスペルを多用し、全体に祝福的なムードを作り出している。All We Gotは今年一番聴いたかも。

レディオヘッドが5年ぶりにアルバムを出した!それだけでもやはり大きな話題になる、あまりにも巨大なロックバンドの一つではあるが、これまでの彼らのアルバムと言えばKid Aに代表されるように、ある種リスナーを”突き放す”ことが多かった。それがこのバンドの存在意義だったし、だからこそ皆新しいアルバムが出るたびに身を構えて必死に向き合ってきた。今回のアルバムはそのような感覚は薄く、今までになく優しく響き渡り、自身の耳にレディオヘッドの音がレディオヘッドの音としてすんなり入ってくる。それはレディオヘッドの長いキャリアの一つの到達点だと思うし、過去の曲が多く披露されたことでも話題になったライブにもその影響があると思う。レディオヘッドを好きになったばかりの当時の高校生の自分には、リアルタイムで初めて聴く新作としてThe King Of Limbsではなく、このA Moon Shaped Poolを聞かせてあげたかったな。True Love Waitsが最終トラックとして収録されたのも印象的。

  • Homecomings - 「SALE OF BROKEN DREAMS」

とびっきり淡いギターポップ!Homecomingsのポップセンスを凝縮した現時点での最高傑作。日本人的な英語の発音も味があって良い。

  • Skepta - 「Konnichiwa」

UKのグライム王。グライムとヒップホップの違いすらよく分からない僕ですが、聴けばテンション爆上げ。

  • Let's Eat Grandma - 「I, Gemini」

イギリスのノリッチから17歳のガールズ・デュオ。初めて聞いたときはその独創的な世界観と質感から勝手に北欧のグループだと思った。今はまだ未完成な部分が多いけど、この才能が花開いたらとてつもなく面白くなると思う。

Charaとコラボしてたりで知った、韻シストの渾身の決意作!適度にちゃらく、心地よい。

  • The Lemon Twigs - 「Do Hollywood」

突如現れた4ADのニューカマー。こいつらもなんと10代。サウンドを聴くと、やはりThe Beatlesを思い起こさせるものはあるけど、そんな言葉だけで片付けるには勿体無いほどのポップセンスと遊び心がある。完成度がかなり高い。

  • Warpaint - 「Heads Up」

浮遊感を感じさせるサウンドはもとより、適度にポップな仕上がりになっていて随分と聴きやすい。男バンドには絶対出せないこの女性的なクールネス。

来日しない系バンドでお馴染みKings Of Leonの新作。持ち前の泥臭さと泥臭くなりすぎないサッパリ感。なんだそれ!とツッコミたくなるアルバムジャケット。

  • きのこ帝国 - 「愛のゆくえ」

愛をテーマに肌寒い時季に心に沁み渡るようなアルバム。初期作品と比べると随分と洗練されてきた印象。#1の愛のゆくえが映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の主題歌だったのだけど、その映画も良かった。

レディー・ガガのアルバムを聴こうなんて思ったのは製作に関わったメンバーが自分好み過ぎたから。マーク・ロンソン、ケヴィン・パーカー、ベック、フローレンス・ウェルチなど。この作品を聴いて、レディー・ガガは音楽家なんだってことを改めて知る。

以上18作品をざっと紹介しましたが(結構長くなったものもw)、ここからがトップテンです。

 

 第10位 Flume - 「Skin」

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豪華ゲスト多数招いた超充実作!近年盛んなオーストラリアのエレクトロ・シーンの中でも一つ頭が抜けた存在になりつつある天才DJ/プロデューサーのFlumeの最新アルバムが聴きごたえ十分。刺激的なビート・サウンドはもとより、vic mensaを始めとするラッパーを召喚したヒップホップ系の曲でも独特なセンスが光っている。しかしアルバムに華を添えているのは#2 Never Be Like You feat. Kaiや#12 Take A Chance feat. Little Dragonなどの実力派シンガーをフューチャーしたトラックであり、最終トラックにはなんとBeckまで参加している。EDM好き・アンチEDMの両方、さらにはポップ・リスナーの耳にまで届きそうな作品である。

 

第9位 Vulfpeck - 「The Beautiful Game」

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細かいことをごたごた言わずとも、改めて音楽って最高に楽しいなって思わせてくれたのが、このVulfpeckの「The Beautiful Game」です。ファンクがお好きならば、このアルバムはたまらないと思います。特に#4のConscious Clubが最高で、多幸感と遊び心が満載です!この人たちの音楽を聴くと心の底から音楽が好きなんだなって感じがします。嫌なことがあった日にはぜひこのアルバムを聴いてほしい。昨年リリースされた「Thrill of the Arts」も併せておススメしときます。

さらにこのVulfpeckというバンド、調べると色々と面白いことが出てくる。

japanese.engadget.com

いつか日の目を見て欲しい。笑

 

第8位 Sunflower Bean - 「Human Ceremony」

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個人的2016年No.1新人アーティスト、NY・ブルックリンからSunflower Bean。ボブ・ディランの「Bringing It All Back Home」をオマージュしたとも言われるこのアルバムジャケットから伝わるのは、この3ピース・バンドはきっとおしゃれに違いないということ。その先頭に立つのは、モデルとしても活躍してるBa/Voのジュリア・カミングであろう。フィールドが違う音楽活動とモデル活動をひょうひょうと両方こなしてしまうのも、既成観念にとらわれない新世代って感じ。

アルバムを聴いてみると、全体的にインディー感を漂わせながら、ドリーミー・ポップ、ガレージ・ロックサイケデリック・ロックなど展開しております。複雑なことは何もしていないけれど、迷いなく音が鳴らせてる感じがなんとも初々しい。サマソニでのライブパフォーマンスもかなり良かったので、世界中で積み重ねたライブの経験が次作以降にどのように還元されるのか、そして彼らが今後どのように化けていくのか今から楽しみで仕方ない。

 

第7位 Suede - 「Night Thoughts」 

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邦題「夜の瞑想」の通りにこのアルバムを聴けばその後の睡眠の質がグッと上がる!なんて保証はできないが、間違いなく素晴らしいコンセプトアルバムであることは保証はできる。一曲一曲に凄みがある。今年の初頭にリリースされ、Suedeまだまだ凄えな!と感心したのも遠の昔のことのようです。

再結成して早2作目ということだが、精力的行ってきたライブ活動が創作意欲を掻き立てているのであろう。かつてのダークで甘美な世界観はそのままに、過去の名作をアップデートさせたような作品を未だに作ることができるのには本当に感服する。出したばかりのアルバムの再現ツアーを敢行したのも本人たちの作品に対しての自信の表れであろう。

 

第6位 Local Natives - 「Sunlit Youth」 

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USインディー・ポップ界切っての優等生Local Nativesの三作目。新世界の扉を開くかのように力強いシンセ・ポップ曲Villainyから幕が上がるこの「Sunlit Youth」は以前に比べて各楽曲のスケールが大きくなったかのように感じられる。全体的には明るいムードが漂う作品だが、時折エッジの効いたギターが聴こえてきたリして、安全になり過ぎず、しかし安心して聴くことができるといった具合に仕上がっている。こういう美しくかつ、幻想的でクールな質感をまとっているアルバムは少し曇っているような日の午前中に聴きたいですね。

 

第5位 The Weeknd - 「Starboy」

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まさしくスター・ボーイであることを力強く証明した作品。

海外ではこの“スター・ボーイ”に疑うものは誰もいないだろう。欧米ツアーのキャパはアリーナ級(1~20,000ほど)で、フェスでは既にヘッドライナー格、比較対象は同じくカナダ出身のスーパー・スターJustin Bieberという具合である。しかし、ここ日本での人気はどうだろうか…?海外との知名度の差を少しでも埋めなければならないと勝手に躍起になってしまうほど、今私はこのThe Weekndというアーティストの魅力に取り憑かれている。

マイケル・ジャクソンの再来とよく言われがちだが、それは歌い方や声が似ているという部分がまずあると思う(本人も影響を受けたと語っている)。しかし、それ以上にスター性の部分での評価が大きいのではないか。たぶんThe Weekndことエイベル・テスファイはアルバムタイトルに表れている通り、“スターになること”に対して嫌に思っていない。いや、むしろ好意的な姿勢を持っているように感じる。そもそも男性アーティストというのはアイドル的目線が自分に向くことを嫌う傾向にあると思う。それは一番欲しいのは音楽的評価であり、アイドル的目線はその邪魔にしかならないからだ。現にここ十数年でポップ・スターと聞いて思い浮かぶのはほとんどが女性アーティストである。また“スターになる”ということは、主戦場はポップ・シーンであり、そこで戦っていくためにはサウンドがメインストリーム寄りにならざるを得ない。そうなればそうなるほど、音楽的評価は得づらくなっていく。それは当然3枚のミックステープというかなりのインディーシーンを出所として、一気にメインストリームの世界まで駆け上がってきたこのThe Weekndも例外ではない。しかし、彼を見ているといつの日かその両方の評価を獲得することが可能かもしれないと思わせてくれるのだ。その理由はまだ自分のなかでもはっきりしないが、Daft PunkがRandom Access Memories以来の新曲のコラボ相手としてThe Weekndを選んだということも理由の一つとしてはある。そんなオープニングとエンディングをDaft Punkで飾ったこのアルバムは当然のように素晴らしいアルバムなのであった。

 

第4位 Angel Olsen - 「My Woman」 

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いつの間にやらUSインディー・ロックが大好きになっていた自分にとって、今年また新たに好きなアーティストが増えた。ミズーリ州セントルイス出身のシンガーソングライターAngel Olsenである。そんな彼女はこの「My Woman」が3枚目のアルバムとなるわけだが、この作品で大躍進を遂げた。そのあおりを受けて私の耳まで届いたのだと思うが。もともと彼女は非常にフォーク色の強い作品で世に出たのだが、今作はフォークがベースにありながらも、一曲目からシンセの音が聞こえたり、かなりオルタナ的なギターが響き渡る曲なんかもある。常に求心的な態度で音楽制作に臨むインディーロックの精神を持つアーティストには間違いないが。でもそれ以上に私の心の琴線に触れたものはやはり彼女の特徴的なボーカルである。どこか凛とした表情をする彼女のその歌声は今にも泣きだすのではないかとも言えるほどに感情的で力強い。そんな歌声で『Shut up kiss me Hold me tight』と何度も強く歌い上げるのだから一度聴いただけでも耳に残ってしまう。あとこれは完全に余談なのですが、どことなく菊地凛子と雰囲気が似てますよね。

 

第3位 The Avalanches - 「Wildflower」

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The Avalanchesが待望の2ndアルバムを今年の7月に発売した。待望と言っても、自分としては全く待ってはいない。というのも1stアルバムが発売されたのは16年前の2000年で、実を言うとThe Avalanchesを知ったのはフジロックに出演することがアナウンスされてからなのだ。(結果的にキャンセルしちゃったけど…。)つまり1stアルバム「Since I Left You」を初めて聴いた興奮そのままに、間髪入れず2ndアルバムに臨むことができたのだ。例えて言うのなら、スター・ウォーズを全く知らない人がフォースの覚醒の公開前にエピソード1~6を一気見するようなものだ。The Avalanchesの場合、一枚聴くだけで彼らの全てを知ったような気になれるし、そのたった一枚がポップ・ミュージック史に名を残す歴史的名盤として今なお君臨しているのだ。Since I Left Youを初めて聴いたときのあのノスタルジーが襲い掛かる感覚はその後数か月もの間自分を虜にした。幾重にも積み重ねられたサンプリングによって現実離れした世界観が作り出されていて、再生ボタンを押すことによってまるで自分がその世界で旅をしている気分になる、そんなレコードなのだ。

それでは2ndアルバムの話をするとしよう。「Since I Left You」に続く2作目として発売されたこの「Wildflower」はと言うと、作風はそのままに、決してシャッフル再生はすべきではない構成となっている。しかし前作の“現実離れした”という印象は薄く、今作の舞台となっているのは間違いなく現実世界であるだろう。というよりもっと日常的なものを連想させる。それはゲストボーカルが参加している曲がいくつかあり生の声が存在していることが一つの要因だし、Live A Lifetime Loveなんて曲があるくらいだからこの見立てはおそらく間違えてはないと思われる。しかしアルバムの前半・後半では少し雰囲気が変わってくる。前半ではFrankie Sinatraなんかに代表されるように不穏な現実世界が描かれているのだが、Going Homeでその不穏な世界から逃げて行き、後半の平和な日常世界へとシフトしていくように感じる。(サウンド的には刺激的な前半と比べて、後半は少し安心感がありすぎな気がしないでもないが。)2000年代初頭のどこか浮き足立った雰囲気が漂う時代の中では前作のような雰囲気がマッチするが、2010年代に発売するアルバムとして今作の現実的価値観は正しいのではないかと思う。個人的なベストトラックとして挙げるのは、オープニングトラックのBecause I'm Me。もう最高のオープニング曲です。(PVも良いよ!)

 

第2位 The 1975 - 「I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It」

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邦題『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』

あまりにも長く、そしてナルシズム全開なタイトルを初めて聞いたとき、サマソニ2014でThe 1975のライブを見て以来、彼らは今後アイドルバンドとして突き進んでいくんだろうなとある種の確信を持っていた当時の自分にとっては、名声を手に入れて天狗になった勘違いバンドのようにしか思えなかったのだが、聴いた後となっては全力で撤回したい。今手元にあるすべてのアイディアを詰め込んだのではないかとも言えるバラエティに富んだ内容かつ、それでいて一つのコンセプト・アルバムとして機能している非常に優れたアルバムだ。アルバムの序盤は従来のイメージとほど近い80's感満載のファンキーチューンで彩るが、中盤に入るにつれてエレクトロニカポスト・ロック、シューゲイズ的な曲調が増えてゆき、彼らの真骨頂が見て取れる。マシュー・ヒーリーが元気よく歌う曲がないので、アイドル的な目線でThe 1975を見ている人たちにとっては、少し退屈な局面かなと勝手に心配したりしつつ(タイトル曲なんて最高だぜ!)、それをじっくり聞いて乗り越えたときのThe Soundの風通しの良さは半端ない!最後に優しく切ないアコースティック・ナンバーを持ってくるのも、まるで“おやすみ”と語りかけるように、タイトルにかかったアルバムの締め方でとてもロマンチック。むかつく。

全17曲で大ボリュームな作品であることは間違いないのだが、聴き始めると意外とあっという間でその世界観に惹きこまれる。聴き手を飽きさせないアルバムを作ることができるのは、彼らのそのバランス感覚の良さにあると思う。それはデビュー当時から他の新人と一線を画してきたところでもある。「バンドの存在をある種の概念のようなもの、つまり“ブランド”として認知してもらいたい」と当時から語ってきたように、常に客観的な目線を忘れず、バンドの見せ方・作品の見せ方を意識してきたに違いない彼らの自己プロデュース力の高さはやはり際立っている。外見のカッコよさに加えて、インテリジェンスな側面も持っている。そしてなにより作品が素晴らしい。ナルシストなのは間違いないけど、それをしっかりアートとして昇華させているのはお見事。欠点なんて一つも見つからないのではないか。やはりむかつく。

 

第1位 Frank Ocean - 「Blonde」 

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今年一番の衝撃でした。フェスシーズンが終わり、これから何を聴こうかなというタイミングに、まるで青天の霹靂のごとくリリースされたのがこのFrank Oceanの「Blonde」。私が今年一番聴いたアルバムで、下半期はずっとこの作品に魅了され続けました。各音楽雑誌・サイト、あるいは個人の年間ランキングで軒並み上位に位置すること間違いないだろうけど、この作品なくして2016年の音楽は語れないというほどに超重要な一枚だったと思います。

どこか神聖で重苦しい雰囲気がアルバム全編に漂っており、どこまでも抽象的に世界が描かれて行く。驚くほど大胆に声が加工されてる曲もあるが、それが逆に大きな説得力を持って耳に響くのが新鮮である。多くの曲がアンビエント・ミュージックのもとでアカペラ的に歌われていて、それがさも誰かに訴えかけるようでもなく、どこか独白的だ。このアルバムは『孤独』が一つのテーマにあるかもしれないが、不思議と寂しい感じはしない。Frank Oceanの歌声には孤独をも包み込む温かみがあるから。「Blonde」はそんな優れたR&Bシンガーと芸術的才覚から導かれるあまりにも美しいサウンドが同居する、他のどの作品にも似ていない圧倒的なアルバムなのである。

 

この作品はリリース方法も斬新だった。まず「Endless」というヴィジュアル・アルバムを発売し、その翌日にこの「Blonde」が発売されるという流れで、当初はCDなどは発売されず、iTunesでダウンロードするか、ストリーミングで聴くしか方法はなかった。つい先日のブラック・フライデーでCD・LPが一日限定で販売されたが、それのみ。(当然買った。)ネットに繋がりさえすれば、音楽が聴ける時代。CDなどは一部のマニアだけが買うものという時代になりつつある昨今を考えれば、当然と言えば当然なのかもしれない。しかし、それをここまで思い切りやってしまうのも中々勇気のいることだと思う。興味深いのが、この脱CDの流れに乗っているのが、Frank Oceanはじめ、Chance The Rapperなど、今“面白いことが起こっている界隈”であるということだ。デジタルなもの・フィジカルなもの、リリース方法も含めてアルバムの概念が揺らぎつつある今の時代。後々になって、2016年のFrank Oceanの「Blonde」は確実に転換期の重要作品として振り返られることになるだろう。

 

 

ベスト10まとめ

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以上私の年間ベストを拙い文章とともに発表してきましたが、いかがでしょうか?やはり作品だけをズラッと並べてただランキングを発表するのは味気ないし、下手なりにも文章を添えないと個人的なランキングとして発表する意味もないかなと思います。ただ根底にあるのはあくまでも“良かった”、“悪かった”の判断のみです。個人的な好みによる部分がやはり大きいし、発売前から期待値が高くて相当ヒドい作品じゃない限りランキングにのせてやろうなんてことも考えたりします。The Weekndなんてそうかも。Beckの新譜も発売延期にならなかったら多分紹介してただろうな。あとランキングを考えるにあたって、リリース当初から大絶賛されていたFrank OceanのBlondeを1位にするのも悔しいな〜なんて気持ちもあったり。多少は悩んで作成しました。

自身のランキングを見てると、ある程度トレンドに影響を受けつつも自分の元々の好みがブレンドされたような感じですかね。書き始めたら去年よりグッと文量増えててウケる。来年はどうなるのでしょうか。それでは良いお年を。